秋のフルーツに関連する食物アレルギー ― 口腔アレルギー症候群(OAS)のご紹介 ―
秋から年末にかけて、果物が食卓に並ぶ機会が増える季節です。毎年楽しみにされている方も多いと思われますが、アレルギー体質の方では注意が必要なケースがあります。
代表的な例として、りんごや洋ナシ(ラ・フランス)などのバラ科果実があります。これらを摂取した後に、
・口腔内のかゆみ
・イガイガ感
・口唇や咽頭の違和感
などの症状を自覚することがあります。
多くの場合は軽症ですが、蕁麻疹を伴うことや、頻度は低いもののアナフィラキシーに至る例も報告されています。
口腔アレルギー症候群とは
このような症状の原因として知られているのが、花粉症との交差反応です。
特に、ハンノキやシラカンバなどの樹木花粉に感作されている方では、これらの花粉と構造が似たタンパク質を含む果物・野菜を摂取した際に、免疫反応が生じることがあります。
このように、植物・樹木花粉と果物・野菜との交差抗原性によって起こる食物アレルギーを、
**口腔アレルギー症候群(Oral Allergy Syndrome:OAS)**と呼びます。
主な症状
・口腔内、口唇、咽頭のかゆみ・違和感
・軽度の腫脹
・蕁麻疹
・まれに呼吸苦、血圧低下などの全身症状
※症状の程度には個人差があります。
原因となりやすい食材・背景
原因となる果物・野菜は、花粉の種類によって異なります。
例えば、
- シラカンバ・ハンノキ花粉:りんご、洋ナシ、モモ、サクランボ など
- イネ科花粉:メロン、スイカ、トマト など
といった関連が知られています。
治療・対応
・原因食品の摂取回避
・加熱調理(加熱で症状が出にくくなる場合があります)
・症状が強い場合は抗ヒスタミン薬の使用
・アナフィラキシー既往がある場合は専門的評価
症状や既往によって対応が異なるため、自己判断せず医療機関での相談が重要です。
当院での検査・対応について
当院では、採血によるアレルギー検査を行い、結果をもとに日常生活での注意点や食事の工夫についてご説明しています。
また、症状が出やすい方には、抗アレルギー薬の内服方法や使い方のポイントについてもご案内しています。
症状が強い方や、これまでに重いアレルギー症状を起こしたことがある方には、必要に応じてエピペン®(アドレナリン自己注射薬)の処方も行っています。
参考資料
原因となる花粉を産生する植物・樹木と、果物・野菜との関係については、以下の資料が参考になります。関心のある方はご覧ください。https://www.thermofisher.com/content/dam/allergy/ja/images/svg-pdf/PFAS.pdf